弟がまさかの大江健三郎を読んでいる。
文庫本なんて手にしているのなんて見た事ないのに、なぜいきなり大江さんなのか。。
遠くから見ていたらきっと漫画だろう・・じゃ、ない!!
なんだ!?ゴルフの打ち方の本か!?
にしては、ちょっと絵も入ってないし、妙だ。
と思って何気なくそっと近づいて覗くと、文庫!大江健三郎!死者の奢り・飼育!
すげえ、新年パワーすげえ、と思った。
ぬいぐるみの豆柴を抱きながらごろごろしながら読んでる。
でもよく見ると左手にはケータイがあってゲームもしている。
ゲームしながらそんなレベルの高い本読めるのか。。
ゲームの攻略本片手にゲームならわかるけど、何だかよくわからないけどふかぁ〜い所にいけそうな本読みながらゲームとは。恐るべし弟よ。
でもよく考えると、もうおじいさんの人が若い頃に書いた本を今の若い子がゲームしながらでも読んでるってすげえなぁ。
60年位前の小説らしいですよ、これ。
僕らが今作った音楽とか本が2079年の若者たちに読まれたり聴かれたりしているかって言うと、ほぼありえない出来事なんじゃないかなぁ、とか思う。
はっ、もしや今僕は奇跡的な光景を目にしているのか!!
ちょっとわくわくするなぁ。
読み終わったらさりげな〜く感想を聞いてみたいものだ。
おっ、今はもうゲームを置いて頰に手をやりながらじっくり読んでいる。
メガネもしているしちょっと頭も良さそうだぞ。
鼻だけ詰まっててずるずるいってるけど、いいぞ。
でもすごいよな。
本読んでる弟は今同じ部屋にいるけど、頭の中じゃもうどっか別の場所に移動してて、木のざわめきとか、嗅ぎ慣れない体臭とか、屍体のリアリティとか、主人公のつぶやきとかを聞いてるんだよな。
言葉の魔法で違う世界に連れて行かれてるんだ。
自分から踏み込んでってか。
ある世界を言葉の中に閉じ込めて、まったく見知らぬ、生まれた時代も全然違う人に伝える。
たぶん、弟は何かを得て、何かが変わって、また弟に戻る。
なんだかいいなぁ。
ゲームだっていいけど、本もいいよねって話。
今度は村上龍でも勧めてみようかな。
おしまい