夜の森に迷い込んでカモシカを見た

大体、夜は静かすぎていけない。

夜の森なんかに迷い込んだらもう恐怖心が心にへばりついて心臓が音を立ててるのが聞こえて来る。

今日は夜の森に迷い込んでカモシカを見た。

車のライトに照らされて、目が水色に光り、悠々と道を横切っていった。

野生の動物は美しさを持っている。

その身が物語っている。

あんな暗闇の中で堂々と生きているのだ。

自分だったら怖くて逃げ出してしまうだろう。

だけどもっといけないのは外の森に迷い込むことじゃない。

中の森に迷い込むことだ。

自分の中にある森に迷い込むと、そこには自分の恐れる全てのものがある。

答えを探している人には、それをひたすら斧で打ち砕いている男が現れるし、

自分の過去を恐れる人にはいつの間にか自分が7歳の子供に戻ってる事に気付かされる。

未来を恐れる人には失敗した自分の姿が延々と映し出される。

そして、鏡を覗く魔女が現れ、君の心臓を鷲掴みにしてしまう。

朝になり光が差すまで、君は恐ろしい森の中をさまよい歩く事になる。

何もなかったかのように朝は来て、夜はいつの間にか招かれざる客を連れてくる。

夢から覚めた君は汗をびっしょりかいて森の中から抜け出してくる。

一体いつ僕は世界から飛翔し、森を抜け安息を得たのか。

外とは中の世界との連絡路であり、中の世界の具象である。

そんな筈はないと誰もが言った。

しかし君の不安を食べ物にする動物が中の世界にはうろうろしている。

そいつは外の世界から君の森へやって来た。

あるいはどこか別の所から君の中にすでにあった。

人間は外からの攻撃には割合強いが、内側からの攻撃には脆い、と誰かが言っていた。

自分の森の中に狼を買っている人は要注意だ。

不安な夜に目を光らせて森に住んでいる良い生き物を食べてしまうかもしれない。

今日は狼の遠吠えが聞こえる。

そんな夜には部屋を暖かくして好きな音楽を聴いてあったかい飲み物でも飲むんだ。

そんなんじゃ足りない事はもちろん承知だ。

でも何もしないよりはましだ。

全くの闇夜に森の中。

そんな時には光を探してほしい。

それは誰かの歌っている歌であったり、思い出の中の笑顔であったり、実際の手であったりする。

一杯のコーヒーかもしれない。

この世界には、何にでも光は宿りうる。

人は人で安心したり、人との関係の中に喜びを見つけたりする。

ある物や場所には誰かの時間と労力と気持ちが詰まっていたりする。

見えない物を見つけられるようになりたい。

少しの想像力を手に、毎日を覗いていたいと思う。

朝が来た。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする